この物語はフィクションです
「「ごちそうさまでした!」」
この言葉を合図に皆の昼休みは始まる。
まだ給食を食べ終えていない私は慌ててあと3口くらいのきなこ揚げパンを一気に放り込んだ。
別に誰かと昼休みに約束をしているわけでもない。どうせ1人だ。
無理やりきなこ揚げパンを食道に流し込み、牛乳パックへと手をつける。この寒い時期に冷たい牛乳を一気に食道に流し込むのは少々きつかった。
そして淡々と食器を片付け、はい終わり。
これでやっと私の給食が終わった。
私は小学生の頃、いじめられそのまま中学へと進学し最初は友達など勉学など色々な物に打ち込めたがその元気も早々に付き入学から約3ヶ月でほぼ不登校みたいになってしまった。
入学当初、仲良くしてくれていた子も今では他人のように接してくる。壁がある。
なので教室には中々いれず、調子のいい時は皆と一緒に授業を受けるも調子の悪い時は出れる授業だけ出て、後は保健室で自習だ。
今日は後者。1時限から4時限までずーっと1週間後の社会のテスト勉強をしていた。皆は私のこの生活をなんと思っているのだろうかいやそもそもなんとも思っていないだろう。私の存在すら。
久しぶりに出た英語の授業の時、ペアで話す際に私の隣の男子は私に目もくれず前のペアに混じった。私が保健室にいる期間ずっとこうしてきたのだろう。隣の男子は前のペアに指摘されるまで私がいることに気が付かなかった。
さてそんなどうでもいい話は置いておく。
私は机の引き出しから分厚い本を取り出した。1番好きな作家さんの本。その作家さんはとても有名で何作か映画化しているしいくつかのラジオパーソナリティも務めている。なのでクラスの本好きの子なら知ってると思い、この話題を降ってみるも皆首を傾げるばかり。皆は表紙とタイトルで読む本を決めるそうだ。私みたいに作家で選ぶ人などいないのだ。
そして私は本を持ち担任の先生の机の横の椅子へ座る。私は昼休みはいつもこうやって過ごしている。保健室は先輩達の愚痴吐き場になってるし誰かと遊ぶなんて早々にできない。そこで私は見つけたのだ。1番良い安全地帯を。
何事もなく本を広げる。そうすると先生が話しかけてきた。
「あのグループには入らないの?」
"あの"とは1番後ろの席に集まっている女子4、5人のグループのことだ。と、いってもいわいる陰キャのグループ。でもブスなどの暴言が飛び交う。陰キャ同士の罵り合いほど醜いものは無いのに。
「あー、ちょっと合わなくて…笑」
適当に返す。ノリも合わない、趣味嗜好も合わない。そんな人達といたくなかった。
「え、でも前ひなのさん達とお祭り行ったって…」
"ひなのさん"とはそのグループの一員。罵り合いはいつもひなのちゃんの"メガネブス"から始まる。
ひなのちゃん… 正直もうすっかり苦手だ。
前の席の隣の男子。その男子は私が唯一悩み事を話せる人だった。ある時その男子がやけに真剣に学校のiPadを見つめるので何かと覗いたら某北海道の中学のいじめの記事だった。
何故かその男子はいじめについてiPadでたくさん調べていて私はその流れで自分の過去のことを打ち明けられた。初めて信用できる人ができた。そう思っていたのは私だけだった。
その男子とは席替えにより隣同士の席ではなくなってしまった。そしてその男子の新たな隣の席はひなのちゃん。その2人はすぐに打ち解けた。授業中はだいたいお喋りをしていた。しかも私の前の席なので会話が耳に入ってくる。正直とても迷惑だった。
しかも前までその男子にはちゃん付けで呼ばれていたのに席替えになった瞬間さん付けになってしまった。今日なんかあの人って言われたしひなのちゃんにもさん付けで呼ばれた。もちろん信用はとっくになくなっていた。
そんな感じであまりひなのちゃんのことは好きでは無い。
「もう話さなくなった感じ?」
先生が察してくれる。私はこくりとうなずく。
すると先生はあの子はどう?あの子はどう?など私に聞いてきた。最後には仲良くなれそうな人リストを作って渡してくれと言われた。そんなもの作るわけが無い。
そんなことよりも先生が私に友達がいないことを察しそれを改善しようとしている。この空気感からもう辛かった。
私はもう友達など諦めているのだ。
すると昼休みの終わりのチャイムが鳴る。
その後は英語があって、掃除をして、もう後は帰るだけになる。
皆が帰ったタイミングを見計らって履きなれたローファーを履き、外へと出た。
空は雨がいかにも降りそうな雲で覆われていた。
辛くなったらいつでも授業に出なくていい
先生の隣に座っても怒られない
仲良くなれそうな人リスト
きっとこれが私が人と仲良くなれない理由だ。
これが無くならない限り誰とも仲良くなれないのだ。
頑張なければ。
頑張なければ。
頑張なければ。
頑張なければ。
頑張なければ。